改めて活動をふり返る3
5. ケニアでのボランティア活動は大変だと思いますが、その中でも一番辛いこと、そして楽しかったこと、はなんですか。
一番辛いのは,家族と離れること。青年海外協力隊員は単身赴任しか認められていません。2年間の任期中は,よほど特別な理由がない限り一時帰国も認められていません。ただし,今では世界中に携帯電話が普及しており,ケニアでも隊員は全て携帯が通じるエリアに赴任しているので,隊員間の連絡はもちろん,国際通話で日本の家族ともいつでも連絡を取り合えます。
楽しかったことは無数にあります。まず日本と違ってケニアでは自分の自由に使える時間がたくさんあります。私のように学校に派遣されている隊員の場合,週末に加えて学期ごとに1~2ヶ月もの休みがあります(ケニアは1月が新年度で3学期制をとっています)。この間は旅行三昧です。有名なサファリツアーやインド洋沿岸のリゾート地に行ったり,現地事務所の許可があれば任国外旅行(行ける国は限られています)だってできます。私もタンザニアでクリスマス・ホリデーを過ごしました。
ナイロビにある隊員連絡所(通称ドミトリー)での隊員どうしの交流も楽しみの一つ。年齢も職業も全く異なる人たちとケニアという“地の果て”で出会うなんて,奇跡としか言えません。「カカメガにサッカー王国を作る」「梅の街道を作る」など,彼らのギラギラした夢(野望といった方が適切かも知れません)を聞いているだけで楽しいものです。隊員どうし,特に同期の絆は驚くほど強く,帰国後も続いていく人が大勢います。
もちろんケニア人との交流も忘れられません。裏切られたり,衝突したり,なかなか理解してくれなかったり,辛いことの方がはるかに多いのですが,それをお互いに乗り越えて一つの仕事をするというのは,そのこと自体で十分楽しいことです。その中で,個人的に信頼できる関係を結ぶことのできた人もいました。そのことが帰国後の今も,ケニアにかかわり続けていきたいという自分のモチベーションになっています。
6. 発展途上国でのボランティア活動をした中で、先進国日本の人々に伝えたいことはありますか。
私たちは発展途上国,特にアフリカ諸国に対して大変狭く誤ったステレオタイプを持っています。アフリカの国と言えば「暑い」「貧しい」が2大イメージでしょう。でも実際にケニアに来たら,まず驚くのは素晴らしい気候と驚くほど発展した都市の姿です。
ケニアの気候は雨季と乾季しかなく,気温はほぼ一年中日本の5月(春)と10月(秋)のような快適な気候です(ただし,これは中央高地の場合で,インド洋沿岸は湿潤,東北部は乾燥地帯です)。クーラーも暖房も要りません。
また首都のナイロビは東アフリカ一の大都会で,人口300万人以上,高層ビルが立ち並び,足早に行き交う人々は先進国の都市でよく見られる風景です。慢性的な交通渋滞で大気汚染は深刻です。ホールセールスを行う大きなスーパーやお洒落なレストランにアウトレット・モール,いくつものスクリーンを持つ映画館やボーリング場,ディスコ,カジノなどの社交場。何と赤道直下なのにスケート場まであります。上でも書いたように,携帯電話もかなり普及していて,“お金さえ出せば”先進国と変わらない生活ができます。
その一方でナイロビには,アフリカ最大のキベラスラムもあります。ここには,貧困に苦しみ一日1ドル以下で生活する人々が80万人もいます。実はこのキベラスラムは,ンゴング・ヒルズという高級住宅街のすぐ隣に広がっています。このようにケニアは極端な繁栄と極端な貧困が共存する国なのです。
でも程度の差こそあれ,繁栄と貧困が共存するのは日本など先進国でも同じこと。最近では,日本でも低所得者と高所得者の経済格差はどんどん拡大しています。ただ普通に暮らしていると,そんな格差に気づかない,見えていないだけなのです。ケニアの場合,格差が発展の阻害要因ともなっているので否応なく対応を迫られていますが,私たちはどうでしょうか? 実は周りにも様々な格差があり,それで困っている人が大勢いるのに,気づいていないだけなのではないでしょうか?(それとも,わざと見えないふりをしている?)
「ケニア」と聞くと遠くの国のことで自分たちと関係ないと思いがちですが,そこで起こっている問題は自分たちの周りでも起こっていることなのです。そうした足元のちょっとしたことに目を向け行動していくことが,結局は世界の大きな問題の解決にもつながっていくのだ(よく言われる“Think globally, act locally”ですね)ということを,私はこれからも日本の高校生に伝えていきたいと思っています。
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